仏教入門 おしえて千葉先生 対談第一回
本願寺広島別院・安芸教区教務所 機関誌「見真」2007/03号
千葉乗隆 千葉山安楽寺 浄土真宗本願寺派
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◎本願寺史研究の第一人者に聞く 対談第一回
仏教初心者の巻!! 真剣に求める
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明田:
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先生、実は僕、仏教に興味を持っている初心者なんですけど、どうしたらいいのでしょう。
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千葉先生:
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そうですね。明田君は素直ですね。(笑)
禅宗などで用いられる仏教の入門書「十牛図(注参照)」でいうと、黒い牛(=自分の心)を探す「発心」という部分になります。それは、自分に興味を持ち、自分をもっと知りたいと思うことでもあります。この自分のことを真剣に突き詰めて考えられたお方が親鸞聖人なのです。特に生死のことを。
私たちは、ややもすれば良いことをしようとしても、何かあったら途中で投げ出してしまいがちです。
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明田:
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先生、それはダイエットとか勉強や貯金などのことでもいえますか?
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千葉先生:
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(笑)…。いい加減に妥協するというのではなくて、やはりとことん自分自身のありようというものを追及していかないと、いい加減な気持ちじゃ、いい加減に終わってしまうわけです。ダイエットも勉強も。(笑)
必ず死なないといけないわけですから、真剣に一度は自分自身のありようを考えてみる必要があるのです。いい加減な気持ちじゃこの間題は解決しないのです。私は死んだらどうなるか、あるいは、生きているってことはどういうことか、とことん突き詰めて考えてみる必要があるのです。
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明田:
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真剣に生死について考えられたのが親鸞聖人なのですか?
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千葉先生:
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そうです。親鸞聖人は妥協しないで、とことん自分自身を追い詰めて、命がけで29歳まで修行されましたが、悟りを開くことが出来なかったのです。
その時、逃げてしまう、妥協してしまおうとする自分の本性のようなものを、これをまたどうしたらよいものかと真剣に悩まれるのです。
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明田:
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壮絶なものなのですね。その後、親鸞聖人は?.
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千葉先生:
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法然聖人のところに駆け込まれます。そして、阿弥陀さまの「教え」を受けたのです。「阿弥陀さまというお方は、その救いの手から逃げ出そうとしているものを追いかけてきて、捕らえて離したまわない方だと」お聞きになったのです。
法然聖人の話してくださった 「阿弥陀さまのお救いによってお浄土参りをさせて頂く」 という言葉にであってからは、生涯、親鸞聖人は、ご仏前で手を合わせる時、自分の力によって悟りを開くことが出来ない自分を救ってくださる、阿弥陀さまのご恩に感謝するお念仏を称えていらしたのです。
自分自身と真正面からとことん向きあった時に出てきたのが、親鸞聖人の報恩感謝のお念仏だったのです。
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明田:
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死ぬこと、生きることを真剣に考えるのですね。親鸞聖人に学びたいと思いました。ありがとうございました。
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注:十牛図(じゅうぎゅうず)
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1.野生の黒い牛が牧童の調教を受ける(発心)
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2.訓練を受けて次第に白くなり(修禅)
→
3.全身が白くなる(悟りをひらく)
→
4.再び日常生活に戻る(教化する)
を10枚の絵であらわした図のこと。人生読本・修養書として用いられたもの。
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「お話し」: 千葉 乗隆:
本願寺史料研究所所長 龍谷大学名誉教授
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「聞き手」: 明田 周士:安芸教区機関誌『見真』編集部
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「イラスト提供」: 竹林地 俊人
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