浄土真宗の歴史に学ぶ
(仏教研修会 第320回) 2000/ 5/28
千葉 乗隆
「親鸞聖人伝絵」の作者覚如上人の生涯 2

1、伝絵の編集
1 「源氏物語絵巻」 平安後期の制作
   
2
 
「伴大納言絵詞」 平安後期
  貞観8年(866)伴善男が応天門に放火し、遠流に処せらる顛末
   
3
 
「信貴山縁起絵巻」 平安後期
  大和の信貴山の命運の伝記
   
4
 
「法然上人伝法絵」 嘉禎3年(1237)
  法然伝絵の祖型、原本所在せず
   
5 「親鸞聖人伝絵」 永仁3年(1295)
   
6
 
「鑑真和上東征伝絵巻」 永仁6年(1298)
  鑑真の伝記
             
7
 
「一遍聖絵」 正安元年(1299)
  一遍の伝記
   
8
 
「拾遺古徳伝」 正安3年(1301)
  法然の伝記
   
9
 
「融通念仏縁起」 正和2年(1313)
  良忍の伝記
   
10 「法然上人48巻伝」 後伏見上皇(1288−1336)の命で制作
   
11
 
「慕帰絵」 観応2年(1351)
  覚如の伝記

2、「親鸞伝絵」編集の意図
1

 
 親鸞聖人の33回忌を機会に、聖人の行実を明らかにする。聖人に面授の門弟も減少しつつあり、彼らの生存中に、聖人についての事柄を聞き書きする。
2  親鸞聖人は法然上人の教えを正しくうけつぐ正嫡であることを示す。
   
3
 
 旧仏教・神祇・聖徳太子・善光寺如来と聖人との関係を明らかにする。
4
 
 聖人の墓所大谷廟堂を聖人の遺跡として顕彰し、ここを真宗門徒の聖地とする。

3、「親鸞絵伝」の構成

上巻
第一段
 
出家学道
 
 9歳
 
第二段
 
吉水入室
 
 29歳
 
第三段
 
六角夢想
 
 31歳(29歳)
 
第四段
 
蓮位夢想
 
 84歳
 
第五段
 
選択相伝
 
 33歳
 
第六段
 
信行両座
 
 33−5歳
 
第七段
 
信心諍論
 
 33−5歳
 
第八段
 
入西鑑察(定禅夢想)
 
 73歳
 
下巻
第一段
 
越後流罪
 
 35歳
 
第二段
 
稲田興法
 
 42−63歳
 
第三段
 
山伏済度
 
 42−63歳
 
第四段
 
箱根霊告
 
 63歳頃
 
第五段
 
熊野霊告
 
 63−90歳
 
第六段
 
洛陽遷化
 
 90歳
 
第七段
 
廟堂創立
 
 示寂後10年
 
4、現存する「親鸞伝絵」の主要な作品
    
1


 
高田専修寺本(重文)


 
13段構成、上巻第四段と第八段なし。
詞書覚如上人自筆、奥書は永仁3年12月13日付。
 
2



 
西本願寺本(重文)



 
14段構成、上巻第四段なし。
詞書覚如上人自筆、奥書は永仁三年12月12日付の根 本奥書のみ。  
3



 
東本願寺康永2年本(重文)



 
15段構成。
詞書覚如上人自筆、奥書は歴応2年(1339)4月24日付および康永2年11月2日付。
 
4





 
東本願寺弘願本(重文)





 
15段構成。
詞書は光養丸(善如上人)筆、奥書は貞和2年(1346)10月4日付。
もとは茨城県那珂湊市淨光寺に所蔵されていた本。
絵は高田専修寺系の構図が多い。
 
5


 
千葉県照願寺本(重文)


 
詞書も絵も康永2年本と全く同様。
外題および康永3年11月11日付の奥書は覚如上人筆
 
6




 
大阪市定専坊本(重文)




 
詞書存覚(覚如上人長男)自筆。上段八段、下段を欠く。
詞書は康永2年本と同様ながら、絵は独特な構図も見られる。
保存極めて良好。

 
7


 
京都市仏光寺本


 
一切教校合を含め、14段構成。
奥書は根本奥書のみ、14世紀末ごろの制作か。