(仏教研修会 第346回) 2003/1/26 浄土真宗の歴史に学ぶ

蓮如上人年頭の感懐と和歌

1.蓮如上人御一代記聞書
    
 勧修寺村の道徳、明応二年正月一日に御前へまゐりたるに、蓮如上人仰
 かんじゅうじむらのどうとく、めいおうにねんしょうがつついたちに ごぜんへまゐりたるに、れんにょしょうにんおお

せられ侯ふ。道徳はいくつになるぞ、道徳念仏申さるべし。自力の念仏といふ
せられそうろふ。どうとくはいくつになるぞ、どうとくねんぶつもうさるべし。じりきのねんぶつといふ

は、念仏おほぐ申して仏にまゐらせ、この申したる功徳にて仏のたすけたまは
は、ねんぶつおほぐもうしてぶつにまゐらせ、このもうしたるくどくにてぶつのたすけたまは

んずるやうにおもうてとなふるなり。他力といふは、弥陀をたのむ一念のおこ
んずるやうにおもうてとなふるなり。たりきといふは、みだをたのむいちねんのおこ

るとき、やがて御たすけにあづかるなり。そののち念仏申すは、御たすけあり
るとき、やがておんたすけにあづかるなり。そののちねんぶつもうすは、おんたすけあり

たるありがたさありがたさと思ふこころをよろこびて、南無阿弥陀仏南無阿弥
たるありがたさありがたさとおもふこころをよろこびて、なむあみだぶつなむあみ

陀仏と申すばかりなり。されば他力とは他のちからといふこころなり。この一
だぶつともうすばかりなり。さればたりきとはたのちからといふこころなり。このいち

念、臨終までとほりて往生するなりと仰せ候ふなり。
ねん、りんじゅうまでとほりておうじょうするなりとおおせそうろふなり。
蓮如上人和歌
   文明十一(1479)年正月に山科にて祖師の御恩徳の事を
 ○ふる年も くるる月日の 今日までも なにかは祖師の 恩ならぬ身や

 ○をくるとし めぐる月日の 今日までも いづれか祖師の 恩ならぬ身や

 〇六十地あまり おくりむかふる 命こそ 春にやあはん 老の夕くれ

   文明十六(1484)年正月日
 〇七十に みてる年まで 老の身の いつをかぎりの 世にはすままし

 〇七十地に みてる年まで いける身の かりのやとりを いつか出まし

   法印権大僧都兼寿年暮ぬれば満八十になるべき事を
 〇仏にも 祖師にもよはひ おなじくて 八十地にみてる あくる初春

 ○我なくは 誰も心を ひとつにて 南無阿弥陀仏と たのめみな人